

離婚する場合、慰謝料だったり養育費だったりとお金に関する約束事も決めなければいけません。
しかし、口頭だけでの約束だったり、当事者だけで作成した離婚協議書は、将来相手がもし支払いを滞納した場合、すぐに請求することができなくなってしまうのです。
公正証書は、法務大臣に任命された公証人が作成するため、不利にならないメリットがたくさんあるのです!

目次
公正証書とは一体なに?
公正証書とは?
公正証書は、日本全国に約300箇所に設置されている公正役場で、法務大臣に任命された公証人が作成する文書のことです。
公正証書は、証拠力が高いため、裁判になったとき証拠として有効に活用できます。
公正証書と離婚協議書の違い
離婚するときや離婚後に財産分与や慰謝料、養育費について後々トラブルにならないように約束事をまとめたときに離婚協議書を作成します。


それぞれの違いとは?
離婚協議書 | 公正証書 |
作成者:当事者 | 作成者:公証人 |
もし約束通りの支払いがされず、相手に請求する場合は、訴訟を起こさなければいけない。 | もし約束通りの支払いがされず、相手に請求する場合は、訴訟を起こさなくても、裁判所が相手の給料や財産を差し押さえしてくれる。 |
公正証書は、国の公正役場が作成するため、もし約束を破られたとしても国が動いてくる形になるため、裁判をする必要がないのです。
公正証書を作成する目的
離婚となると、夫婦で共有していた財産が半分に分けられるため、いろんな問題が発生します。
その中でも、浮気による慰謝料や子どもがいれば養育費などお金に関する約束事もしっかり決めなければいけません。
しかし、口頭で約束しても、将来相手が支払いを拒否するという最悪なケースも考えられます。
そんな時に、公正証書が利用されるのです。
子どもが小さければ、成人するまで期間が長く、お金も相当かかります。総額が大きくなると、離婚する時点では一括払いできないこともあるため、月々の支払いになることが予想されます。
公正証書には強制執行できる執行証書となため、養育費や財産分与などの分割払いに関する契約をするときに重宝されます。

公正証書を作成するメリット
公正証書を作成することは、メリットが多く、離婚しても後々のお金の支払いについて悩む必要がありません。
メリット①証明力に優れている
公正証書は、法律の専門家であるプロである公証人が作成するため、法的に間違いのない契約書を作成できることが一番のメリットです。
法務大臣が任命している公証人が作成するため、後々トラブルが起きたときに、公正証書の内容が裁判で否認されたり、無効とされる可能性はほとんどありません。
メリット②執行力がある
公正証書は信頼性が高いため、約束していた慰謝料や養育費などの支払いが滞った場合、裁判所に「強制執行」の申立ができます。
強制執行をするためには、裁判所に訴訟を起こし、勝訴しなければできませんが、公正証書を作成していれば、すぐに強制執行に応じてくれます。

メリット③安全性があるから安心
作成された公正証書の原本は、公証役場で20年間保管され、改ざんや変造の心配もありませんし、万が一、交付された正本や謄本が紛失や盗難、破損などしても、再交付を受けることが可能なので安心することができます。
メリット④削除や修正ができる
離婚が決まった場合、夫婦間で約束事を交わし、示談書を作成します。そして、その示談書を元に公証人に公正証書を作成してもらいます。
その示談書が法的に問題がなければ、ほぼ同じ内容で公正証書が作成されることになります。
仮に、示談書に記載されている内容が、法的に問題があると判断されれば、公証人が内容を削除や修正をしてくれます。

公正証書の手続きの流れ
公証役場は、日本全国に約300か所あるため、自宅の近くや勤務先の近くの公証役場で作成できます。
step
1夫婦間で話し合いをし、示談書などで約束事をまとめる。
step
2近くの公証役場に行き、公正証書の作成依頼をする。
公証役場で、示談書の内容を確認するので、手続きには30分~1時間ほどかかります。
step
3数日後、公正証書の内容確認をする。
作成から約1~2週間ほどで公正証書は出来上がります。
公正証書が出来上がったら再度、役場へ行きます。
このとき、夫婦そろって役場へ行き、内容をお互いに確認しなければいけません。
step
4内容に問題がなければ手続き終了!
内容を確認し、間違いがなければ夫婦と公証人それぞれが公正証書に署名と押印をし、作成に対する手数料を支払えば手続き終了です。

公正証書に記載すべき内容
公正証書に記載すべき事項について確認していきましょう。
記載すべき内容
①離婚後の住まい
②財産分与
③慰謝料
④親権・監護権
⑤養育費
⑥面会交流権
⑦年金分割
主に、財産分与・慰謝料・養育費・親権など夫婦で合意を得た内容を記載していきます。
①離婚後の住まい
離婚をしたら、今まで住んでいた家にどちらか残って住むのか、あるいはお互い出ていき、実家に帰るかアパートを借りるのかと住まいのことを考えなければいけません。
もし、マイホームを購入して、住宅ローンが完済していない場合は、注意が必要なのです。
住宅ローンは銀行で申込をしているため、銀行に無断で売却をしたり、名義変更や連帯保証人の変更などをしてはいけません。
住宅ローンの名義変更については、下記の記事で詳しくまとめているので、チェックしてみてください。
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②財産分与
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で築いた貯金や家、車などの財産を分割することを言います。一般的には、夫婦で半分ずつ分けることがほとんどですが、家庭事情でも変わってくるため、どのように分配するのか話し合いましょう。
③慰謝料
浮気をされて慰謝料を請求する場合は、浮気を認めた事実と慰謝料の金額もきちんと明記しておきましょう。
④親権・監護権
夫婦の間に、未成年の子どもがいた場合、どちらが親権を持つのか、監護権はどうするのかを決めなければいけません。
基本的に、親権を持った親が監護者も兼任することがほとんどですが、話し合いにより夫婦で役割を分ける場合はそのことも記載しましょう。
⑤養育費
養育費の支払いについて、毎月いくら支払うのかを決めましょう。
子供が成人するまで払うのか、毎月何日にいくら振り込むのかなど、具体的な期日や金額もしっかり決めておきましょう。
⑥面会交流権
親権を持たない場合でも、子どもに会う権利はあります。このことを面会交流権といいます。
月に何回子供と会うのか、1回の面会時間はどのくらいなのかなど決めましょう。
⑦年金分割
年金分割とは、婚姻期間中に支払った年金の納付記録を夫婦で半分ずつに分けることを言います。
公正証書に年金分割の合意を得たことを記載しておくと、後から年金分割請求することができます。年金は老後のことになるため、忘れないように記載しましょう。

公正証書を作成するときのQ&A

作成にかかる時間は?
公正証書は、役場に行って申込当日に作成されることはありません。目安の期間としては、約1~2週間と思っていたほうがいいです。
公正証書は、有効な公正証書に作成するために、申込者から提出された資料の確認→調査→作成という流れで作成します。内容が複雑であったり、約束事が多ければ、長期化します。
また、申込内容に法律上で無効となる記載があったり、内容に疑問点などがあると、申込者に照会が入るため、余計に時間がかかるケースもあります。
公正証書は、申込内容によっては、数日で作成される場合もあり、反対に3週間以上時間がかかる場合もあります。

費用はいくらかかるのか
公正役場を利用して、公正証書を作成したら、公証人手数料を支払わなければいけません。
支払いのタイミングは、公正証書が完成し、受け取るときに、現金で支払います。
公証人手数料は、法令で定められています。
慰謝料や養育費などの金額 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円に5,000万円までごとに13,000円を加算 |
3億円を超える10億円以下 | 95,000円に5,000万円までごとに11,000円を加算 |
10億円を超える場合 | 249,000円に5,000万円までごとに8,000円を加算 |
引用:日本公証人連合会
準備するものは?
公正証書を作成するために準備するものとして、本人確認書類と公正証書に記載する内容を確認する資料が必要です。
本人確認書類
①実印
②印鑑証明書(※公正証書の作成日から遡って6か月以内に発行したものに限る)
また、印鑑証明書に代わって、「運転免許証」「個人番号カード」などがあれば、本人確認として認められます。
また、本人を確認できる資料のほか、公正証書に記載する内容を確認する資料も公証役場から提出を求められます。
公正証書を作成する目的によって必要とされる書類が異なります。
離婚の場合は、二人が夫婦であったという証明が必要となるので、戸籍謄本を提出しなければなりません。
戸籍謄本で子どもの確認もできます。
公正証書を作るタイミングは?
公正証書を作るベストなタイミングは、離婚前です。
離婚後でも作成は可能ですが、離婚前に行ったほうが話し合いもスムーズにでき、連絡が取れなくなるという事態も防ぐことができます。
夫婦のどちらかが役場にいけないときは?
夫婦のどちらかが役場に行くことが難しい場合、委任状を用意すれば代理人を立てて、公正証書の作成手続きををすることができます。
しかし、夫婦両方に代理人を立てることはできません。
また、公証人に出張してもらうことも可能ですが、出張にかかる手数料が割り増しされ、日当、交通費などの負担をしなければいけません。
仕事が忙しくて、どうしても行けない場合は、代理人に依頼することをおすすめします。

慰謝料や養育費等の約束をするなら公正証書は作成すべし!
公正証書の作成メリットや手続きの方法などを分かってもらえたかと思います。
離婚協議書との一番の違いは、法務大臣から任命された公証人が作成するため、法的に間違いのない内容となります。
相手が支払いを滞納しても、裁判所が直ちに動いてくれ、相手の給料などを差し押さえしてくれます。
公正証書は、日本全国の役場で作成することができるため、自宅の近くで申込むことができます。
しかし、作成には時間がかかるため、作成を希望される方は、余裕もって、離婚する前に申込みましょう!